本文へ移動

地図で見る!「寒い地域の木」が "良い木" な理由

木材を選ぶとき、こんな言葉を耳にしたことはありませんか?
寒い地域で育った木は、いい木だよ
でも、どうしてでしょう?
今回はその理由を、世界地図と科学的データと一緒にじっくり見ていきましょう。
(※ここでは主に建材や家具材に使われる針葉樹についてご紹介します)

高品質木材が生まれる"寒冷地ベルト"とは?

「寒冷地の良材ゾーン」マップ
まずはこちらをご覧ください。

フィンランド:パイン・スプルース
 スウェーデン:スプルース
ロシア(シベリア):ラーチ
カナダ:ダグラスファー、スプルース
アラスカ:ヘムロック、スプルース

このゾーンは平均気温が低く、
夏が短い=成長がとてもゆっくり。
そのゆっくり成長が、木材の強さと安定性を育てます。

ゆっくり育つから、強くて安定する

寒冷地で育つ木は「年輪幅」が狭くなり、木の細胞がぎっしり詰まります。これにより:
曲がりにくい
反り・割れが少ない
寸法が安定する(乾燥収縮が少ない)
という、理想的な建材としての特性が備わるのです。

フィンランド北部 vs 南部 _科学的データから見る違い


以前、ある家具メーカーのお客様からこんなご相談をいただきました。
「同じパイン材でも、フィンランド北部のパインを指定して購入したい」

理由を伺うと――
北部の木の方が、安定していて質が良いと聞いたから」というお話でした。

供給する私たちとしても、その"良さ"を客観的に裏づけられるデータが必要だと感じ、現地フィンランドの企業に問い合わせたところ、提供されたのがこの研究論文でした。
出典:Karkkainen &Marcus (1985), Silva Fennica


「ノルウェースプルース材の収縮特性」
この研究では、フィンランド北部(ラップランド)産と南部産のスプルース材を比較し、
乾燥時の寸法安定性や収縮傾向が詳しく分析されています。
引用文献:MATTI, KARKKAINEN and MICHEL, MARCUS. "SHRINKAGE PROPERTIES OF NORWAY SPRUCE WOOD." SILVA FENNICA 1985, vol. 19, no.1, p68

注目ポイント
年輪が細かい北部材の方が乾燥収縮が小さく、寸法安定性が高い
密度がほぼ同じでも、南部材は体積収縮率が9%前後大きく、反りや割れのリスクが上がる

このように、北部の厳しい気候の中でゆっくり育った木材の方が、より安定した性質を持つことが、数値としても裏づけられているのです。(南部体積収縮率:14.5×1.09(9%)=15.8)

北欧材と日本の代表的な木材の密度比較


次に、フィンランドのスプルースと日本の代表的な針葉樹であるトドマツやスギの基本密度を比べてみましょう。一般に、密度が高い木材は強度が高く、乾燥による寸法変化が少ないため建材として安定します。そのため、寒冷地産の木材は世界的に評価が高いのです。

―日本の針葉樹にはまた別の良さも―

スギやトドマツには密度や強度以外の多くの魅力があります。

軽さ・柔らかさによる施工のしやすさ
心地よい香りによる室内環境の快適さ
地域資源としての価値、伝統建築に欠かせない素材

つまり、木材の良さは単純に「寒冷地=良材」というわけではなく、用途や目的によっても変わるのです。

寒冷地の木は強く安定。その一方で、それぞれの木には独自の魅力がある

寒冷地育ちの木材は、
年輪が狭く細かく
乾燥後の寸法安定性が高く
反りや割れが少ない
という特徴で、建材や家具材に高評価。

一方で、日本のトドマツやスギは、
軽く加工しやすく
香りや風合いが豊かで
地域の暮らしに根ざした存在
という大きな魅力があります。

どちらの木材も素晴らしい魅力があります。
木材選びは、育った場所や性質、使う場所や目的を考えながら、その素材の持つ「ストーリー」を感じてみてくださいね。

参考文献

・MATTI, KARKKAINEN and MICHEL, MARCUS. "SHRINKAGE PROPERTIES OF NORWAY SPRUCE WOOD." SILVA FENNICA 1985, vol. 19, no.1, 67-72, https://doi.org/10.14214/sf.a15410


Nor.t.h
〒047-0261
北海道小樽市銭函2丁目54-9
TEL:0134-61-7181
FAX:0134-61-7189
 
 
2025年7月
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
定休日:水・木・祝
TOPへ戻る